法律コラム
色々と物思う一年でした。
今年は、仕事でもプライベートでも様々なことがあり、色々と考えさせられる一年でした。そんな中で強く感じたのは、やっぱり我々は対人関係の中で生きているのだな、そこに喜びも悲しみもあるのだなということでした。そして、人とかかわる中では人の不幸にも遭うことになりますが、結局のところ、我々に出来るのは、できるだけ誠実にと心がけて人と接するしかないという思いでした。自分に後悔を残さないためにも。
また、仕事柄避けがたい面もありますが、できるだけ関係する人が無用な後悔をすることがないようにとも改めて思いました。
随分前の離婚事件で、お母さんが、別居中のお父さんに、絶対にお子さんを会わせようとしないケースがありました。お子さんたちがお父さんに会いたくないと言っているからというのがお母さんの言い分で、それを証明しようと、お母さんは、お子さんたち(上のお姉ちゃんは高校生で、下の弟は中学生でした)に、どれだけ強くお父さんを拒絶しているのか手紙を書かせ、それを証拠として提出していました。お子さんの気持ちもありますし、将来の父子関係に無用なダメージを与えるのではと感じ、私は相手方弁護士に何とかならないのかと申し入れましたが、お母さんの対応は変わりませんでした。この事件では高等裁判所の段階で家庭裁判所調査官が面会交流の調査に入ることになりました。その一環で調査官がお子さんたちに直接会ってお父さんへの思いを確認したところ、お姉ちゃんはともかく、弟はとてもお父さんに会いたがっていることが分かりました。弟は、お母さんの気持ちも考えて、お母さんの前では言えなかったんですね。その結果を踏まえ、弟とお父さんの面会交流は実施できるようになったのですが、最後までお姉ちゃんの方は無理でした。そこで事件は私の手を離れたのですが、程なくして、お父さんが若くして急にお亡くなりになってしまわれました。その時に私が感じたのは、「ああ、これでもう取り返しがつかない」「娘さんが将来引き摺らなければよいんだが」ということでした。娘さんが、成長するにつれて、無用な自責の念に苛まれるようになるのではと心配になりました。もちろん父と娘がどんな関係だったか私には分かりませんし、お父さんにしてみれば「自業自得」だったのかも知れません。でも、それはともかく、娘さんについて、そんな心配をしなくても済むよう、もっと「ましなやり方」を我々大人はできたのではないかと思わざるをえませんでした。そんなことも思い出した一年でした。
生きていれば自然と年はとりますが、なかなか賢くはならないし、「不惑」の境地にはとても到達できそうにありません。ただ、来年こそ、少しは心乱されることなく過ごせるようになりたいものです。
それでは皆様良いお年を。