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法律コラム

2024年09月

他山の石

今回は少しだけ仕事に関係するお話を。
唐突ですが、我々の世界も随分と変わりました。私のころと比較すると、司法試験の合格者は倍以上になりました。一時は3倍近くになっていたこともあります。そこまで一気に人数が増えてしまうと、人があぶれてしまって、就職先に困ったり、資格は取れても仕事がなかったりといった人が出てきてしまいました。合格してもうま味が少ないということで、司法試験自体の人気も無くなってしまいました。
不祥事も以前より目に付くようになりました。宜しくない仕事をしている弁護士の存在を日常的に感じるようになり、「弁護士倫理」ということが頭をよぎる機会が増えました。情けない話ですが。世間の弁護士を見る目も厳しいものに変わってきました。
少し話は変わりますが、私のように田舎の弁護士会にいると、ある程度の経験を積むと、弁護士に対する苦情に携わることになります。
一番最初が副会長在任時の「市民窓口」対応です。弁護士会には、日々、弁護士に関する様々なクレームが持ち込まれるのですが、その初動対応をするのが副会長の仕事の1つになっています。面談してお話しを聞いたりして、しかるべき処理をしていきますが、なかなかに苦労の多い仕事です。ただ、そうした仕事をしていると、何が人々の不満や強い怒りを生んでいるのかが理解できるようになってきます。それは「横柄な態度」、「不誠実な連絡/対応(報告しない/電話に出ないなど)」といった事柄であることが多いようです。「弁護士だと思って、何様のつもりだ」とお怒りなのであって、社会人としてのきちんとしたマナーが弁護士にも求められているのです。当たり前のことですが、対応していて身の引き締まる思いがします。
それとは別に、弁護士に対する懲戒処分を求める申立(懲戒申立)が弁護士会になされることもあります。申立があると、まず「綱紀委員会」というところに案件が回されます。そこでまず調査・審議して、懲戒委員会の審査を求めるか決定します。私も数年前からその委員を仰せつかっています。内容にわたるお話しは勿論一切できませんが、ここでもなかなかストロングタイプの案件を扱っています。それなりの数を扱っていると、何がトラブルを生んでいるのか、避けなければならない事柄は何かといったことが段々と理解できるようになります。そして、不満を抱かれやすい弁護士というのが、実はある程度顔ぶれが決まっていることや、ある特定の個人的資質が人々の怒りを招いていることに気づかされることになります。身の引き締まる思いがします。
余談ながら(ここまで全て余談ですが)、我々の仕事は仕事それ自体から学ぶことの多い、いささか特殊な仕事でもあります。人々から話しを聞いていると、何がトラブルのもとになるか、それが経験的に手に取るように分かってくるからです。例えば、日常的に離婚案件を扱ううちに、「ここが奥さんの怒りポイントだな」とか肌身に染みて理解できるようになります。同じミスでも、これは致命的だなとか分かってきます。
そうしたいろんな場面で、「他山の石」という言葉が頭に浮かびます。
油断していると明日は我が身だぞと耳元でささやく声が聞こえます。
こんなこと書いてどうするんだ。